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No.52

2015年 3月28日
佐藤 敏雄

Self-driving car
 
「自動車」:今やこの名前をどのように変更すべきかという時期に来ているようだ。無人走行車?無人運転車?ロボカー? 
    (“Self-Driving Car Aims for First Cross-U.S. Road Trip”
             Cars That Think, IEEE SPECTRUM, March 18, 2015 その他より)

 米国のDelphi Automotive なる会社が、3月22日から、サンフランシスコ~ニューヨーク間、全長5,600㎞で「Self-driving car」(無人走行車?)の路上走行試験を行うとのこと。ニューヨーク到着は、国際自動車ショーが行われる4月3日の予定だとか。
 注目すべきは、最新技術を用いたこのロボット的自動車のデモが、著名自動車メーカーや最近注目のグーグルではなく、小さな自動車部品メーカーの手で行われることである。この会社は、車がレーンからはみ出さないようにする装置や、人間よりも早く機能するブレーキの開発などで知られ、2014年には14億ドルを売り上げている。デモに使用される車は、アウディのSQ5 2014を改造したもので、3台の短距離レーダー、3台の光学カメラ、6台のレーザー・レーダー等を搭載している。
 この無人走行車は、制限速度の範囲で一日8時間走行することを狙いとしており、万一、車が高速道から外れそうになった場合には、搭乗する人間が運転をとってかわることになっている。
 一方、グーグルの開発担当者は、2020年までに商用に供すると、最近バンクーバーでの会合で宣言し、「今11歳の息子は4年半後に運転免許を取れるが、その必要がないように努力している」と語った。会合で公開したデモビデオは、その正確な運転技術で会場を沸かせた。しかし政府当局の方針はまだ決まっていないようだ。
 メルセデス、アウディ、BMWその他も実用化の努力を続けており、アップルも自社開発をしているとのことだ。イスラエルのMobileye社は、光学カメラのみで走る「ロボカー」を開発し、これを「poor man’s car」と呼んでいる。パリのValeo社 (比較的安価なlidar搭載車を開発)は、75,000ドルの設備を載せたグーグル車は「rich man’s robocar」だが、Mobileyeと提携して「middle-class man’s robocar」を作ると発言している。
 日本でも各社が開発中で、2年前にあるメーカーが、警察への届け出なしに自動運転車を路上で走らせ、後で問題になっている。無人走行車が実用化されれば交通事故が激減するという説もあるが、「走る喜び」を奪うなと言う声もある。保険会社が上がったり?になると心配する声もある。果たしてこの開発競争、どのように決着するであろうか。

 

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No.51
2015年 2月22日
佐藤 敏雄

“drone”

 1月末、ホワイトハウスの芝生に小型無人飛行機が墜落したというニュースがあり、世界中を驚かせました。政府職員が趣味で作った機体が誤って進入・墜落したものだったそうで、一時はテロかと大騒動になり、防衛上の問題にもなっています。  このような無人飛行物体「small unmanned aircraft systems (sUAS)」は、小型であり、低空を飛ぶことから鳥との識別も難しく、適切な対策をとらないと、通常のレーダーでは発見が困難です。
 2月15日、FAAはUASに関し、重量25㎏以下で目視可能範囲のみ昼間に飛行すること、最高高度は500フィート(150m)等という規制案を公表しました。(写真はIEEE Spectrum Tech Alert, Feb 12, 2015 より)
 中東の戦争などでは、プレデターと呼ばれるもっと大きな無人航空機が偵察やミサイル攻撃に使われています。
 このようなUASを英語では「drone」と言うようです。見慣れない単語なので辞書を引いてみると、これが面白い。「無人操縦機」の他に「ちっとも働かない雄の蜜蜂」に始まり「怠け者」「のらくらもの」などなど。カナで書いたら「ドローン」となりますが、ドロンすると言えば、忍者が姿をくらますとか、授業をさぼるなどの意味で使われてきました。もともとは、歌舞伎で幽霊が姿を消す時に使われた音響から来ているとか。(アラン・ドロンを想起する方もあり?)
 ドローンは災害救助に使われたり、中国などで商品の配達に使うこと(右写真)が検討されているようです(FAA案では禁止)が、その実用化までには、地上の人や物体に対する安全性の確保など、法規制を含め、多くの検討課題があるようです。
 最近では、無人操縦飛行機の製作材料を毎月販売する雑誌?のコマーシャルがテレビで放映されています。空飛ぶことを夢見て、模型飛行機作りに情熱を傾けていた、かつての航空少年は、今や「のらくら」のドローンと言われるようになっています。いやはや・・・・



 

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No.50
2013年 10月26日
佐藤 敏雄

 SPAM その2
 
 スパム (SPAM) について前号で書いたばかりなのですが、今日の午後、KDDの親友からUrgent Please! なるメール。図らずも我が身にSPAMが襲いかかってくるとは!!! 今日はその顛末をご紹介します。

 I am writing this with tears in my eyes, My family and I made a trip to Manilla unfortunately we were mugged at the hotel where we stayed all cash,credit card and cell(phone?) were stolen off us but luckily we still have our passports with us.
続けて「飛行機が8時間後に出るが、警察も大使館も相手にしてくれない。助けてくれ」と、彼らしからぬ?句読点もない怪しい英語で書いてあります。

親友の困った顔が目に浮かび「何でもやってあげるが、何故日本語で書かないのか。どうすればいいのか」と返信すると、やはり英語で「返事をありがとう。ホテルのPCを使っている。帰ったら必ず返すからLOANをお願い」ときました。金貸してくれということだが、どうしようかなどと考えているうちに追っかけ「ホテルを出るのに3500ドルほど必要。場所はxxx。Western Unionで送金してくれ。頼りにしている」と。

友達は助けてやりたいが、時刻は14時30分。「銀行はもうじき閉まるし、どうしたものか」などと焦りましたが、「お子さんもいることだし何故この私に? 一応チェックしてみよう」と、東京の留守宅に電話してみました。
「あはーー」。
受話器の先でご本人が笑っています。「何だ???この大事な電話なのに!」といささか頭に来たのですが、彼曰く、「さっきYさんから同じような電話が来ましたよ。Z君からも来ました。前の会社のメルアドと住所録が盗まれたようですね」とのことで、やっとSPAMだったのかと思い至りました。一体、何人の仲間がこの被害にあっているのでしょう。

先方は「手続きすんだら確認のメールをくれ」とまで言ってきていましたが、返事をせず無視していると、その後連絡はありません。
 
あまりうまくできているので最初は本気になりかかったのですが、ゆっくり考えてみればどこかおかしい。腹が立つやらおかしいやら。怪しからん!

振り込め詐欺の話など、そんなものに引っかかる奴が馬鹿だと思っていたのですが、シチュエーションがうまく合っていると、あわや引っかかりかねません。 いやはや!

という訳で、身近な実例としてご紹介致しました。お互い気を付けましょう。

こんな輩をとっちめる方法はないものでしょうかね。

以上


 



 

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No.49
2013年 9月26日
佐藤 敏雄

 SPAM ♪ 好きにして ♪
 
 スパム (SPAM) とは、受信者の意向を無視して、無差別かつ大量に送信されてくる「迷惑メール」のことですね?? ところが・・・・。

                ♪好きにして♪  好きにして♪  煮るなり焼くなり好きにして♪

 最近のTVコマーシャルでこんな歌と踊りの映像をご覧になった方も多いことでしょう。ご存知かもしれませんが、これはアメリカ製 豚肉の缶詰SPAMのコマーシャルなのです。 これがまた結構面白いんです・・・が、兎に角、煩い。
 缶詰と迷惑メール、どんな関係があるの?

 SPAMは第二次大戦から戦後にかけて、連合軍の軍隊食として使われ、毎食、毎食出てきて飽きちゃったとか、有名な歌手が「SPAM、SPAM」とまわりを巻き込みながら歌ってうるさがられたため、迷惑メールの代名詞みたいになったとか、その起源については色々あるようです。しかし何かとインターネットに係わっている者にとっては、「SMAP」ならともかく?このCM、煩くて、どうにも頂けません。食べれば結構おいしいのですがね。

 次は同じようなお邪魔「虫」の話ですが、最近のIEEE誌でみつけたものです。
 コンピュータでの「不具合」を「BUG(虫)」と言いますね。これを言い出したのは、1947年にハーバード大学の電子・機械式コンピュータのリレーの中に1匹の蛾を見つけた女性技師グレース・ホッパーだということになっているようです。しかし、実はそれより遥か以前、かのトーマス・エジソンが使い出したのだそうです。
 エジソン(1847-1931)が、今から140年もの昔1873年に、Western Union のために4多重電信装置を開発していたとき、送受信が止まる原因を突き止め、それ(bug)を捕まえる装置「bug trap」を発明し、特許を申請したのだそうです。しかしこの特許は拒絶にあい、20年も放置されていたとか。
 1876年には彼の有線多重電信の実験ノートに初めて「bug」が記載され、その後、伝記にも頻繁に現れているそうです。白熱電球を発明するなどしてエジソンは次第に有名になります。1889年には英国の新聞記者が、夜も寝ずに蓄音機の「虫」の除去作業をやっているところを取材したり、ご本人の手記にも現れるなどして、機械設備などの不具合を指す「bug(虫)」なる用語は次第に世間に知られるようになったのだそうです。
 SPAMのメーカー、ホーメルフーズ・コーポレーション(米国ミネソタ州)は1891年の創業だそうですが、エジソンがSPAMを召し上がっておられたかどうかは定かではありません。

付録

 この記事のネタを探しているとき、新しい英単語を発見??しました。それは「coin」。言うまでもなくコイン、すなわち硬貨ですね。ところがこれを動詞に使うと「作り出す」になるのです。例えば、
「A newly coined word」 :「新しく作られた言葉」
 
Did You Know?  Edison Coined the Term “Bug” 
 
 知りませんでした。辞書を引いて、初めは一体何故かと思ったのですが、よく考えてみれば、コインは「鋳造」すなわち作り出されるものですよね。
 英語知らずのお粗末な一席でした。
 
No.48  Seventeen

佐藤敏雄
2013年 3月17

 

前号に引き続き「数」のお話です。(1979年のIEEE Com Magより)

 

米国ハンプシャー大学のDave Kellyさんは、数学科で大半が17歳の学生と、17年間にわたり、「17」という数字について調査をしてきました。「17」は奇妙な数字のようです。

 

例えば・・・・驚くなかれ!  4913= (4 + 9 + 1 + 3)3  =17 

(この数の並び方、不思議ですね。検算してみて下さい!!)

 

その他、おかしなお話が沢山。真偽を確かめたわけではありませんが、その一部を紹介します。

 

(1)旧約の時代

① エジプトのTut王のミイラは、17枚の布で覆われていた。

② 昔のエジプト人は、オシリスがある月の第17日に殺害されたため、

17は忌むべき数と考えていた。

  ③ ある月の17日目から降り続いた大雨が大洪水を引き起こしたが、

ノアの方舟は、その翌月の17日に、17,000フィートのアララット山に

たどり着いた。

 

(2)「新世界」では

① 清教徒たちは、17隻の船で新世界に到着した。

② バージニア州ロアノークに定住した117人の植民者の中には、17人の女性がいた。

  ③ 200年前、米国人の平均年齢は17歳であった。

  ④ ベンジャンミン・フランクリンは、17歳の時、17人の子供たちとフィラ

デルフィアに引っ越した。

 

(3)最近のアメリカでは

① ペンタゴンには、延長17マイルもの廊下がある。

② ウォーターゲート事件は、1972617日に発生した。テレビ報道

された上院での審議は、1973年の517日に始まった。

③ 高速道路オハイオ・ターンパイクには、17の出口がある。

 

(4)世界では

① ベルサイユ宮殿の鏡の間には、17の鏡がある。

② ピサの斜塔は、現在、垂直軸から17フィート傾いている。

③ エンリコ・カルーソーは、17人の兄弟姉妹が亡くなった後に生まれた。

④ アン女王の17人の子供は、すべて17歳以前に亡くなった。

⑤ カナダ横断パイプラインには17の陸橋が必要だった。

  ⑥ イタリア人は、17を不運な数と思っている。

  ⑦ アテネのパルテノン神殿には、縦方向に17本の円柱がある。

 

(5)宇宙では 

① タイロス気象衛星の太陽電池は、正17角形に並べられている。

② Mariner探査機は1965717日に火星に着陸した。ここで撮影

された火星の最も深いクレーターは17マイルの深さがあった。

③ 地球軌道の離心率は、0.017である。

④ 冥王星の軌道面は他の惑星の軌道面と17度傾いている。

  ⑤ アーサー・エディントン卿は「宇宙には、正確に17 x 2259の陽子が

存在する」と書いている。

⑥ 虹の円錐角は17度である。

 

(6)動物では

① キリンの舌の長さは、平均で17インチ。

② ラクダは、17日間、水なしで歩ける。

 

(7)まだまだ

① 世界最大のメロンの種の数を数えた人がいる。曰く1717個。

② (1979年当時)日本人のほぼ17%の家庭がカラーテレビを持ち、

毎日平均7時間17分、視聴している。(ほんとかい?)

とか・・・・

 

 聖書や古代ギリシャ伝説にはまだまだ沢山の「17」に関わるエピソードがあるようですが、確認するのが面倒。また「17」に絡んだピタゴラスの時代からの面白い純粋な数学の問題も沢山あるのですが、偏り過ぎ、かつ難解なので省略しました。悪しからず。

以上

 



 

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No.47  頭の体操

佐藤 敏雄
2013年 2月20日

 「少しは頭を働かせないとボケてしまう」と思っているこの頃ですが、古い雑誌などの整理をしていたら、面白い図形の記事が出てきました。
 例えば、「1から10まで足したらいくつになる?」 55ですよね?!
 簡単そうだと思って見ていたのですが、だんだん説明の意味が理解できなくなり、ハマってしまいました。その中から最初のいくつかをご紹介しましょう。

(1)三角数
 図1をご覧ください。4色の丸い玉が規則的に並んで、正三角形を作っています。頂点の赤い玉1個から始まり、下方向に黄色の2個を足すと合計は3、それに緑の3個を加えると6、更に青の4個を加えると合計は10と、以下無限に続きます。
 順に並べると

 1  3  6  10  15  21  28  36  45  55 ・・・・

となり、10まで行けば合計は55となります。このような数は三角数と呼ばれるもので、図1は4番目の三角数を示します。
ここで冒頭の質問に戻り、1から10まで足したら? 一々数えなくても「1からnまでの和Sの公式」(忘れちゃったかな??)を思い出して、

 S = 1 + 2 + 3 + 4 + ・・・・・・・ + n = n ( n + 1 ) / 2

を使えば、n = 10 として、10 ( 10 + 1 ) / 2 = 55 が得られます。
これが三角数で、「n番目の三角数は、1からnまでの自然数の和に等しい」ということができるのです。

(2)矩形数
今度は矩形です。図2-1は、図1を直角三角形にして並べ直したものです。これを180度回転したものが図2-2、この両者をくっつけたものが図3です。矩形の形をしており、矩形数と呼ばれます。
この場合の玉の数は、図2-1の三角形を2倍にしたものですから20個ですが、図3で縦の玉が4個、横の玉が5個あることから合計が20であることが確認できます。

      

矩形数は三角数を2倍したものですが、図3から、矩形数は「連続する2つの整数(この場合4とそれに続く5)の積」だということが“発見“できます。これを一般化して書けば、

 「n番目の矩形数は n ( n + 1 ) 」

ということになります。例えば、5番目の矩形数は 5 ( 5 + 1 ) = 30 です。

更に面白いことに、下の表に示すように
n番目の矩形数は、2からn番目までの偶数の和に等しい」
ということができるのです。

 n

 偶数

 矩形数

 1

  2

   2=1 x 2 = 2

 2

  4

   6=2 x 3 = 2 + 4

 3

  6

 12=3 x 4 = 2 + 4 + 6

 4

  8

 20=4 x 5 = 2 + 4 + 6 + 8

 5

 10

 30=5 x 6 = 2 + 4 + 6 + 8 + 10

       ・・・・・・・・

(3)四角数
図4をご覧ください。左下の1個の赤い玉に対し、黄色の3個、次は緑の5個というように、順次、鍵型(逆L型)に玉が積み重なって、次の大きな正方形ができ上がっています。これは四角数と呼ばれるものです。よく見ると、加わるのは全部奇数となっています。
この図は4番目の四角数で、玉の合計は4個の奇数の和、
 1 + 3 + 5 + 7 = 16
です。これは別の見方をすれば、図から、1辺が4個の玉からなる正方形となっていますから、玉の総数は42=16 であることが分かります。 
これを一般化すると、n番目までの奇数の和は

 1 + 3 + 5 + 7 +……+ (2n‐1) = n2  

と書くことができます。

(4)この辺で
 このような「図形数」は、五角数、六角数などに拡張でき、また立体的な四面体などにも適用できるそうですが、ややこしいのでこの辺でやめましょう。
 最後に上の図「パスカルの三角形」をご覧ください。どの数字も、その左上と右上の数を足した数になっているのです。自然数、三角数、四角数などが規則的に並んでいて、よく見ると面白い??
 こんなもの何の役に立つのだとお叱りを受けそうですが、単なる知的好奇心。「数」は不思議としか言いようがありませんね。
 以上、少しは頭の活性化にお役にたてたら幸。いや、おかしくなったかな??

                               以上
 

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No. 46
2012年6月29日
佐藤 敏雄

セレンディピティ

KDDI誌6月号 皆さんは「レコメンド」という言葉をご存知でしょうね。国際会議の仕事を永くやってきた私などは、「Recommend」ならITUで使う「勧告」のことだろうと考えてしまうのですが、最近では、「レコメンド・エンジン」と称し、ケータイでのショッピングなどで商品を勧めるソフトのことを言うようです。もう少し一般的に使われるのが「検索エンジン」で、レコメンドは、画面の小さいケータイに使われるものようです。
 近着のKDDI誌6月号で、KDDI総研の高橋陽一特別研究員が、「セレンディピティ・検索エンジンの新たな先陣争い」と題して書いておられます。k-unetホームページの「KDDI誌拾い読み」では取り上げられませんでしたので、ここで簡単に紹介しましょう。

 3人の王子の物語 「セレンディピティ」とは、「知恵と偶然により、予期しない発見をする」ことです。18世紀の英国の作家Horace Walpoleが、ペルシャの童話「セレンディップの3人の王子」(*)を読んで、いたく感銘し、偶然による大発見をこう呼ぼうと友人に提案したのが始まりだと言われています。

(*) セレンディップ(今のスリランカ)の3人の王子が、ペルシャの旅でラクダを盗まれたという男に出会い、ラクダの特徴を見事に言い当てたことからラクダ泥棒に疑われ、捕まって死刑を宣告されます。幸いラクダが見つかり嫌疑は晴れますが、周囲の細かい状況を観察・分析し的確に予測してラクダの特徴を言い当てたことが分かり、王子たちはペルシャの皇帝に重用されて大活躍します。その後セレンディップに帰り、それぞれ別の国の王様となって幸せに暮らしました。

 コロンブスのアメリカ大陸発見、レントゲンのX線発見、近くはノーベル賞の田中耕一さんの高分子質量分析法の発見などなど、数多くの歴史的な発明や発見にこのセレンディピティが貢献していると言われます。しかし、これらは、決して単なる幸運や偶然のなせる業ではありません。ふとした偶然をきっかけにして閃きを得、幸運を掴み取る能力を指すものです。
 近年、ITにより多くの人がつながり、各人の好みや行動パターンを含め、さまざまな情報を収集することが可能になってきました。これをユーザーのプロフィールと突き合わせて総合的に分析すれば、企業は顧客の好みや性癖に最も合った商品を提供することができるでしょう。「検索」・「レコメンド」関連のアプリやサービスが林立する中、“差別化と生き残りのカギは「セレンディピティ」にあり”との認識が広まって開発や改良が進められ、関連企業のM&Aが進行しています。

 先達 このセレンディピティについては、2000年のノーベル化学賞を受賞された白川英樹筑波大名誉教授が述べておられ、一昨年のノーベル賞受賞者、鈴木章先生や、100歳の日野原先生も引用されておられます。 翻って私は、6~7年前のある機会に、現在k-unetの副代表をされている大谷恭子さんからこの話をお聞きしておりました。メルアドにserendip をお使いになっておられるくらいですから、強い印象をお持ちのテーマなのでしょうね。

 アンテナのお話 1963年11月23日、KDDが初の太平洋横断宇宙中継実験に成功しましたが、その折、図らずもケネディ大統領の暗殺が報じられ、忘れられない一日となりました。やがて1964年から衛星による商用国際通信が開始されましたが、電波は理論上もっと強く受かるべきだったのです。20mアンテナを担当していた私たちは必死に細部に亘る点検を行い、一次放射器の円錐ホーンアンテナが、いわばピンボケ状態で使われていたことを発見しました。その後、他の改善も行われて画期的な性能の大口径アンテナが誕生し、茨城や山口に設置されました。
 問題の円錐ホーンアンテナの性質をもっとよく知りたいと、私は目黒研究所の電波無響室でその性能測定に没頭しました。最大の目的は、ホーンアンテナの開口面の位相を変え、電子的に電波ビームを動かして衛星を追跡することでした。ホーンの中にテフロン(誘電体)を挿入して測定を繰り返しましたが、いくらやっても電波の指向方向は大して変わりません。これじゃダメかと諦めかけたのですが、ある時、テフロンの挿入によりアンテナのサイドローブ(目的外の方向に出る電波)が劇的に変化することに気が付きました。おかしなことがあるものだと徹底的に調べた結果、ホーン内部に挿入する誘電体の大きさと挿入位置を調整すると、サイドローブが完全に消えてしまったのです。サイドローブはアンテナの効率を低下させると共に、他の衛星などに干渉を与えますから、これを消すことは極めて大切なテーマです。 ところがこれにはもう一つ、サイドローブ消滅と同時に、アンテナビームの断面が完全な円形になるという大きなおまけがついていました。円錐ホーンアンテナは、静止衛星のグローバルビーム・アンテナとして使われています。円錐ホーンは、丸い開口をもつのにビーム断面は楕円形だったのです。完全な円形になれば、丸い地球を極めて効率よく照射することができることになります。 その後の検証で、これらの現象は、ある高次モードの発生に起因することが判明し、理論的にもすっきりと解明することができ、「誘電体装荷ホーンアンテナ」と名付けられました。
 上の写真は、ヒューズエアクラフト社の工場で試験中のVI号衛星(部分)。画面左下、赤い矢印で示されたのが4GHzと6GHzのグローバルビーム・アンテナです。 数年後、米国のコムサット研究所に派遣されて間もなく、研究室仲間が“Toshio! Isn’t that your antenna?”と言います。衛星メーカーのヒューズ社がこのアンテナに目をつけ、インテルサット衛星に使うことを勝手に提案していたのでした。これがやがてインテルサットIV-A衛星となり、その後、VI号衛星にも搭載されて国際通信に大活躍することとなりました。 一方、国内では、あるメーカーがこのホーンをNTT用のマイクロ波中継用パラボラの一次放射器として多数製造し、外国に輸出までされたということです。

 幸運に導かれたこのアンテナ。ささやかな「セレンディピティ」だったのかも知れません。
以上

 

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No. 45
2011年5月29日
佐藤 敏雄

π(パイ)のお話
― 神はπに何を隠したのか ―

 
 マンスリーレターNo.7で紹介された素数に続き、変な数、円周率πのお話です。
 先頃NHKで釈由美子がオーナーの「しびれるレストラン」で放映されたのでご覧になった方もあると思いますが、おかしな数列をもう一度眺め直して頂くのも一興かと。
 因みにπという字は、「周囲」と言う意味のギリシャ語περιφερεια(ペリフェレイア)の頭文字です。英語の peripheralはこのギリシャ語から来ており、パソコンの周辺機器がペリフェラルと呼ばれるのもここから。
 πは円周の長さと直径の比で3.14が広く使われていますが、実は無限に続く数列であることはご存知の通りです。いかなる代数方程式の根にもならない超越数と呼ばれます。このπについては、4000年もの昔から多くの説明がなされてきました。
 初めて理論的に取り組んだのはギリシャの哲学者アルキメデス(287BC~212BC)。彼は「円周の長さは、その円に内接する多角形の辺の全長より長く、外接する多角形の辺の全長より短い」ことに着目して96角形まで計算しました。
 その結論は、
  円周率:3.14はここに始まります。爾来、今世紀に至るまで、古今東西、多くの天才がπの値に挑戦してきました。
 ドイツのルドルフ(1540~1610) は「461京1686兆184億2738万7904角形」について、ペンと紙だけで計算し、小数点以下35桁まで算出しました。彼は、計算開始から40年後に亡くなりましたが、その遺言通り、彼の墓碑銘にはこの35桁が記されているそうです。
 17世紀には、次のようなグレゴリー・ライプニッツの公式が発見されました。
 この式で、100項、つまり  まで計算すると分母・分子共に88桁の分数となりますが、通分して得られる膨大な分数の計算で得られる答えは、3.1315・・・。合計10万個の奇数を使って計算しても、3.142582653・・・ と小数点以下4桁しか正しい値になりません。円とは全く関係の無い、この奇妙な奇数とπの関係。ライプニッツ(1646~1716)は、「神は奇数を喜ばれる」と言ったとか。
 次は「ビュフォン伯爵(1707~1788)の針」。間隔dで平行な直線を何本か引きます。その上から、間隔dの半分の長さの針を落としたとき、その針が平行な線に触れる確率は1/πだそうです。これも円とは関係ないですね。
 わが国でも江戸時代の算学者 建部賢弘(1664~1739)は、多角形の辺の数の増加に対する答の出方の変化に着目するという鋭い洞察に基づき、1024角形について10日間、不眠不休で算盤をはじき、41桁まで計算しています。当時としては世界最高の値です。
 18世紀半ばには、かの有名な数学者オイラー(1707~1783)(下の写真)が、
  
など、200に及ぶπ計算の公式を発見しています。
中でも最も有名なのは、オイラーの等式:
      
     (e は自然対数の底、i は虚数単位)
です。後に物理学や電子工学に導入され、近代文明の基礎を作りました。この式には、我々通信技術者は大いに悩まされたものです。
 π計算の歴史についてはネットにゴマンと出ていますので、この辺にしておきましょう。
 1948年、米国で開発されたコンピュータENIACを使い、2047桁まで計算されましたが、真空管を使ったこの機械は故障ばかりしていました。東大では、9年前にスーパーコンピユータにより、1兆2000桁まで計算しましたが、やはり膨大な数の部品の不具合が問題だそうです。
 そんな計算をして何の役に立つのかと言いたくなりますが、今では逆に2つの違うπの計算式を開発中のコンピュータに計算させ、両者の答えが一致するかどうかでその信頼性をチェックするのだそうです。メーカーでは想定外だった設計ミスを発見し、スーパーコンピュータの発達に寄与しているそうです。
 ところで、昨年8月、長野県飯田市にお住まいの近藤茂さんという会社員の方が、自作のパソコンでπを5兆桁まで計算し、ギネスに認定されるという、とんでもない快挙を成し遂げられました。使ったメモリーは24テラバイト。ハードディスクを16台使い、90日かけて算出したそうです。因みに5兆桁目の数字は「2」。5兆の数列に現れる数字の出現頻度はどれもほぼ同じで、それぞれ5000億回ほど。最も多く現れるのは「8」だとか。
 その数列の中には、1の連続とか、0から9まで連続する数字とか、例えば釈由美子の誕生日?19780612なども見つかるそうです。近藤さん、定年後は10兆桁計算を目指しておられるそうですから驚きです。
 πには我々の生活に密接な関係を持つものが多々あります。例えば、所定の号数(サイズ)に合わせた指輪を作るのに必要な地金の長さを決めるためには3.14が使われるとか、陸上競技のトラックの半円周部分の計算には3.1416を使うとルールブックに出ているとか。砲丸投げの砲丸を正確に作るためには9桁(3.141592653)が使われているそうです。
 最後に、あの「はやぶさ」が大気圏に再突入する時に必要な減速ベクトルの計算には15桁のπが使われたと、宇宙研の的場先生が話しておられました。3.14を使ったのでは、地球から15万キロ離れた空間を通過してしまい、地球に帰還できなかったそうです。
 やれやれ、哲人の言葉で締めくくることとしましょう。
Πは神の最高傑作である

以上

 
S&Sバックナンバー(旧サイトを参照しています)
 


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