連載コーナー


 島崎陽子の

美術散歩
美術散歩

第8回

 

The National Gallery, London
ロンドン・ ナショナル・ ギャラリー展

国立西洋美術館 2020年6月18日~ 10月18日

 

 9/20(日)曇天の日に行ってきました。コロナ禍により入場整理券を事前に購入しての鑑賞となりました。事前購入という煩わしさもありましたが、混雑を避けてゆったりと観て回ることができ、結果的にはとても良かったです。
 ロンドン・ナショナル・ギャラリー200年の歴史で、史上初めて英国外での大規模な展覧会とのことです。61作品、すべて初来日。日本で開催されることの意義や価値について中野京子氏が次のように語っています。「ほんとうにすごいこと。とんでもないこと。そういった表現に尽きるでしょうね。一般的な美術館展は目玉となる作品が数点あって、その他大勢が脇を固めるというラインアップがほとんどですが、今回はほとんどの作品が目玉クラス。『61作品、全てが主役!』というキャッチコピーに偽りはありません」。
 作品がバラエティーに富み画家の国籍も多岐にわたり、時代背景や絵画の属性が多様で少々戸惑いもありましたが、中野氏によると、そういった“違い”や“差”に注目しながら見比べるのがこの展覧会を楽しむポイントのひとつでしょう、と仰っています。「完璧に統一感が取れているというわけではなく、良い意味でなんでもありというか、ごった煮状態になっている点もロンドン・ナショナル・ギャラリーの特徴です。ここは他のヨーロッパの多くの有名美術館のように王室が母体ではなく、市民によって設立された美術館でヨーロッパ中から買い集められたコレクションがベースになっています。」
 そしてまた、中野氏は絵画におけるイギリスの国民性を興味深く語っています。「物語が大好きな国民性ということもあってか、イギリスでは美術よりも文学のほうが広く好まれてきました。だから、イギリス出身のメジャーな画家は数えるほどしかいません。…興味深いのは集められた作品に物語が好きなイギリス人らしさが垣間見えるところで、…深い意味やストーリーが込められた作品の多い点が際立った特徴といえます。」  
 パオロ・ウッチェロ、ドミニク・アングル、フランシスコ・デ・スルバラン等の絵は確かに一片の小説から一場面が立ち上がってきているようです。
 会場は7つのセクションに分かれて展示されていました。

- イタリア・ルネサンス
- オランダ絵画の 黄金時代
- ヴァン・ダイクと
 イギリス肖像画
- グランド・ツアー
- スペイン絵画
- 風景画と ピクシャレスク
- イギリスにおける  フランス近代美術受容

 

 私は馴染みのある画家の絵を楽しむことができました。 カナレット《ヴェネツア 大運河のレガッタ》、ゴッホ《ひまわり》、フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女性》、モネ《睡蓮の池》、ルノワール《劇場にて》、ゴーギャン《花瓶の花》

 今回は《ひまわり》を取り上げてみたいと思います。土壁を力強く塗りたくったような筆遣いが印象に残りました。SONPO美術館にも《ひまわり》はありますが、こんなにゴテゴテしていたかしらと気になっているところです。合計11点(または12点)の《ひまわり》のなかで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーのは4番目の作品(1888年8月)、SONPO美術館のは5番目(1888年12月~翌年1月)です。この時期、ゴッホが日本絵画から影響を受けていることは知られていますが、「ロンドン・ギャラリー所蔵のものは、背後に塗られた黄金色がひときわ輝き、どこか金屏風を思わせなくもない」と小野正嗣氏は述べています。そして「ゴッホの絵のひまわりがどれも根を断たれ、花瓶に挿されたものであることが気にかかる。すでに萎れはじめている花もいくつかあるように見える」と興味を掻き立てることを語っています。
 日本の切り花とは違い、西洋では切り花は“残された儚い時間”、“死”を意味するそうです。燦燦と輝く太陽の日を受け、その太陽に向かって光り輝くように咲くひまわりの切り花を描くことで、心の闇の部分を対照的に表現しようとしていたのでしょうか。ゴッホを調べていたら“黄色は孤独の中で愛を求める希望、暗闇の中の一条の光”の一文に出会いました。
 会場で、この絵の解説にゲーテの『色彩論』からの抜粋がありました。そのコメントは覚えていませんが、ゲーテは光に一番近い色が黄、闇に一番近い色が青であるとする、とその著書で述べています。「もっと光を」とも関連性があるのでしょうか(笑)。『色彩論』はターナーの絵にも影響を与えたようです。『色彩論』を初めて知り、ゲーテの多才さに驚かされた日でもありました。

(2020.9.22)

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ー 展示作品から ー