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 島崎陽子の

美術散歩
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コートールド美術館展  魅惑の印象派

 

  昨年12/8(日)快晴、残り1週間となった上野東京都美術館《コートールド美術館展 魅惑の印象派》に行ってきました。ポスターに使用されているエドゥアール・マネ「フォリー=ベルジュールのバー」のお出迎えを受け、胸をときめかせながら入場しました。
 コートールド美術館、今回初めてこの美術館の存在を知りました。学生時代、数回のロンドンへの旅の時にひょっとしたら足を伸ばしていたのかもしれませんが記憶になし。美術館改修工事のために今般多くの名作が来日できることになったようです。

 美術館創設者サミュエル・コートールド(1876-1947)はイギリスの実業家でフランス近代絵画の魅力を母国に伝えたいと1920年代を中心に精力的に絵画を収集、ロンドン大学に美術研究所が創設されることが決まるとコレクションを寄贈しコートールド美術館誕生に至りました。
 上野の館内にはセザンヌ、ドガ、ゴーガン、マネ、ルノワール、ロートレック、モネ、モディリアーニと傑作が勢ぞろい、展示数も多く見応え十分でした。

 私の目を引いた作品のひとつはモネ「花瓶の花」(1881-1882)。華やかでみずみずしく、淡々しい桃色で統一されていて愛くるしい可憐な姿に引き寄せられました。水色のテーブルと藍色の花瓶との配色も絶妙、和室にも似合いそうな雰囲気ですね。場を引き立て和ませてくれることでしょう。
 マネ「フォリー=ベルジュールのバー」の前では、黒山の人だかりの中、時間を忘れて立ち尽くしていました。何かを語りかけてくるようなあるいは注文を待ち受けているかのような謎めいた表情の売り子、テーブルの上の琥珀色やロゼ色のアルコールが透けて見える魅惑的な数々の瓶、マネのサインが刻まれた左端のボトル、フルーツ皿に盛られたリアル感たっぷりのオレンジ、背後の観客の紳士淑女たちのざわめき…。この絵との対峙と会話が醸しだしてくれた異国情緒満載の世界はそれはそれは素敵なエキゾチックな空間でした。
 少女の両腕の長さがちぐはぐであったり鏡に映る少女の背中の位置が不正確であったりと、観る者の注意喚起と想像を呼び起こすアンバランスの構図はマネの遊び心でしょうか、この絵の楽しみのひとつにもなっています。左上の空中ブランコの両足にはドキリとさせられますね。
 “マネ最晩年の傑作”のタイトルにふさわしい、期待に応える一枚の絵でした。

 

 

ー 展示作品から ー