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 島崎陽子の

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美術散歩
美術散歩

第39回

 

セーヴルとポンパドゥール夫人

 

 5月中旬、東京都渋谷区の松濤美術館を訪ねました。
 《セーヴル フランス宮廷の磁器》展

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 セーヴル(Sèvres)はポンパドゥール夫人、マリー・アントワネット、マリー・ルイーズの愛した名窯です。当時流行のファッションを取り入れた小花文や花綱文をはじめ、鳥や人物、風景からシノワズリ、東洋風のデザインも見られました。その華麗で絢爛な磁器にはただただため息が出るばかりでした。うっとり、うっとり。ルイ15世やナポレオンの権威を誇示したデザインにも息をのむほどでした。

 本展覧会HPから一部抜粋してご紹介いたします。
 「西洋磁器は、中国磁器への憧れからヨーロッパ各地で開発が試みられ、18世紀に入ってドイツ、マイセン窯で初めて焼成に成功しました。そしてフランス、ブルボン王朝が設立した王立セーヴル磁器製作所によって、真に西洋的な様式が創造されたと言って良いでしょう。 
 その設立にはルイ15世と寵妃マダム・ポンパドゥール(侯爵夫人)が深く関わり、その後もフランス王室と帝室、共和国が運営を引き継ぎました。セーヴル磁器のデザインはマイセンをはじめヨーロッパ諸窯に多大な影響を与え、西洋磁器のスタイルの基盤となりました。欧米においては、西洋諸窯のなかでセーヴル窯が最高峰とも称されているにもかかわらず、日本ではその魅力に触れる機会はあまりありませんでした。これはもともと王侯貴族向けの注文生産であったために現存数が限られているためです。しかしながら近年、日本でも優れたセーヴル磁器コレクションが確立されてきました」

 
 
 

 さて18世紀、フランスが誇る王立セーヴル磁器窯設立にあたっての立役者ポンパドゥール夫人についてご紹介いたします。ブルボン王家の国王ルイ15世の愛人です。1721年12月生まれ、子供の頃から周りの人を魅了する天性の美貌にめぐまれ、やがて文学や美術を好み、才智に富んだ会話を得意とする女性でした。夫人の美貌と才気にひと目惚れしたルイ15世はあらゆることを彼女に学ばせて、ついに夫人をパリ社交界の第一の花形に仕立て上げたのです。1745年、夫人が24才の時でした。それから1764年の死にいたるまでの20年間、夫人は文字通り「王とフランスとヨーロッパ」に君臨しました。才気あふれる夫人は王を巧みに操縦し、国政にまで関与して大臣や官吏の任免、外交方針の決定、軍の指揮統帥にいたるまで大きな役割を果たしたといわれています。同時に芸術家や思想家を保護し、文芸の擁護にも積極的でした。
 夫人の芸術に対する豊かな感性はよき知人と友人にめぐまれてますます磨きがかけられ、とりわけ陶磁器への深い理解を示すようになり、やがて王立セーヴル磁器製作所の建設となったのです。夫人はそれまでの窯をパリからヴェルサイユの彼女の新しい邸館近くのセーヴルに移転させ、王家の別荘を新しい陶器工場にあてるように提案し「フランス王立セーヴル磁器製作所」として開窯したのです。フランス政府が莫大な国費を投入して設立するにいたった背景には、すでにドイツのマイセンやオーストリアのウィーン窯などの製品がヨーロッパの市場を独占していたことの国家としての面目もありました。

 1789年の大革命の勃発により、暴徒と化した民衆によって工場は破壊と掠奪にあい、セーヴルは閉窯の憂き目をみることになりましたが、ナポレオンの台頭によって装いもあらたに再興され、ナポレオン好みの金彩の皇帝様式の磁器が製作されていきました。ナポレオン好み――ロココは退廃的とされ、古代ローマを意識した端正な様式――アンピール(Empire)・スタイルを取り入れることによって新たな時代を迎えたのです。

 現在も往時と変わらずフランスを代表する高級磁器を製作し続けています。

 セーヴルアトリエの女性造形師「セーヴルで働くことは、フランスの粋を学ぶことでもあるわ」

(2025.7.1)

 

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