第18回 2025年11月28日掲載
藤岡雅宣の モバイル技術百景
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2025年11月 藤岡雅宣の「モバイル技術百景」
基地局増設による品質改善 ―基地局の分類と基地局間連携― 藤岡 雅宣 2025年11月28日 00:00 NTTドコモが品質改善の取り組みとして、基地局の増設を加速するということです。基地局の数が増えると、どのように品質が改善されるのでしょうか。基地局にはさまざまなタイプのものがありますが、それぞれの役割はどう違うのでしょうか。また、品質改善には基地局間の密な連携が欠かせませんが、どのように連携しているのでしょうか。 今回は、この基地局のタイプと使い分け、品質改善における基地局増設の効果、基地局間連携の重要性、ビル内の通信品質の課題などについて考えてみましょう。 | モバイル通信のサービス品質 モバイル通信サービスの品質とは何でしょうか。直感的にはサービス品質はアプリなどを利用している私たちユーザーの体感として捉えられますが、客観的には通信速度、遅延時間、パケットエラー率などの指標で評価されます。 通信速度は、スマホにおける送信(上り)、受信(下り)で単位時間にどれだけデータが送れるかという指標です。遅延時間というのは、スマホとインターネットなどにつながったアプリを処理するサーバーとの間でデータを運ぶためにかかる時間です。たくさんのユーザーが同じエリアでスマホを使ってネットワークが混んでいる場合など、通信速度が低くなったり、大きな遅延が生じます。 パケットエラー率というのはやや専門的ですが、データや音声をネットワーク上で運ぶ単位であるパケットが伝送エラーなどで壊れたり、ネットワークが混んでいて紛失してしまうといった原因で正常に届けられない割合です。 もちろん、品質以前にユーザーにとってモバイル通信で一番基本的な要求は、どこでもネットワークにつながるということです。ネットワークにつながり、移動していても接続が維持されるという前提で、上のような指標が意味を持ちます。 それでは、モバイル通信サービスの品質は何によって決まるのでしょうか。ある広さのエリアを考えた場合、エリア全体の総合的なサービス品質を決める最大の要因は無線基地局の数や性能です。ただ、一口に基地局と言ってもさまざまなタイプのものがあり、高い品質でサービスを提供するためにこれらをどのように使い分けるかということも重要です。
| 無線基地局のタイプと使い分け 図1は、基地局アンテナからスマホまでの距離がどの程度までサービス提供可能かという意味でのカバレッジという観点で基地局を分類したものです。一般的に、基地局は次のように分類されます。 (1)マクロ(Macro)基地局 郊外の高い鉄塔や都市部のビル屋上などにアンテナを設置し、数kmの範囲を広くカバー。広域のサービスエリアの構築によるモバイル通信の基盤、カバレッジ提供が主な役割。 (2)マイクロ(Micro)基地局 商店街や駅前、都会のビル間など人が集まる場所で、マクロでは通信容量が足りなかったりカバレッジが不十分な場所で数百mから1~2kmの範囲をカバー。容量増強が主な役割。 (3)ピコ(Pico)基地局 ショッピングモール内やオフィスの1フロア、ビルの谷間など数十m~200m程度の局所エリアで容量を増大。スポット的なカバレッジや容量増強が役割。 (4)フェムト(Femto)基地局 家庭や小規模オフィス向けの数~数十mのごく狭い範囲をカバー。主に狭いエリアに限定してモバイルカバレッジを提供する役割。 基地局のカバレッジはアンテナから送る電波の強さ、周波数、設置場所などと関係します。ただし、モバイル通信に関する標準化を行っている3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、上記の基地局の分類は電波の強さそのものではなく、基地局とスマホの間で最低限想定される減衰の量に基づいて定義されています。 電波は伝搬距離が大きくなるほど、より大きく減衰します。つまり波の力が弱くなります。たとえば、マクロはマイクロより強力な電波を送信するため、大きな減衰があっても利用できる、つまりより遠距離でもスマホに電波が届くという特性を持ちます。また、ピコはマイクロよりも小さな減衰を想定しますので、より基地局アンテナから近いところでないとスマホが利用できないということです。 通信品質という意味では、カバレッジを確保した上でどれくらいの通信容量を提供できるかということが重要です。つまり、対象となるエリアで多くのスマホユーザーが同時にアプリを利用した場合に、通信容量が大きいほど通信速度や遅延時間がより満足できるものとなります。 通信容量に最も影響が大きい要素が周波数帯域です。たとえば、5G専用帯域であるサブ6(6GHz以下)の一つの帯域で上りと下り合計で100MHzが利用できます。一方で、4Gの多くの無線帯域では上りと下り各20MHzまで利用できます。ですから、単純に考えれば5G専用帯域の基地局が4G帯域の基地局よりも大きな容量を提供できます。 ただ、4Gの帯域をいくつか束ねて利用することで容量を増やすこともできます。逆に、サブ6の無線帯域も複数同時に利用できればさらに容量を増強できます。 もちろん、5Gに対応していないスマホは5G専用の無線帯域を利用できないので広い帯域の恩恵を受けることができません。ただし、多くの場合5G帯域をサポートしている基地局は4G帯域も同時にサポートしているので全体の容量が大きく、4Gユーザーも高い品質で通信できる可能性が高くなります。 4Gや5Gでは原則、隣接した基地局やアンテナで同じ無線帯域を繰り返し利用できます。仮に異なるタイプの基地局でも同じ無線帯域をサポートしているとすれば、原則基地局一つあたりの通信容量は同じとなります。なので、繁華街など多くの通信量が発生する場所ではマイクロやピコなどの基地局でカバーエリアを小さくして、集中する通信トラフィックを通すことが有効です。 そのような特性から、基地局配備はまずマクロ基地局で面的なカバレッジを確保し、周囲の人流や遮蔽物の状況に応じてマイクロやピコを段階的に追加するのが基本です。ここで、面的なカバレッジには相対的に距離あたりの減衰量が小さく、遮蔽物を通り抜けたり、回り込みやすい700~900MHz帯のプラチナバンドや1.7GHz帯や2GHz帯などより低い周波数の利用が有効となります。 特定エリアで品質が不足する場合は、原因は電波が届かないのか混雑しているのかを見極め、複数周波数帯の使い分け、下記のMIMOの最適配備、そして必要に応じてマイクロやピコの増設で容量を強化します。その際は、電波干渉や設置条件を総合的に判断します。 なお、カバレッジを大きくして電波の死角をなくすという意味では、建造物や地形、電波の減衰の影響によって基地局だけではカバーしきれない場所をカバーする無線中継器(レピータ)も有効です。無線中継器は基地局やスマホからの電波を受け、それを再生、強くしなおして逆にスマホや基地局に送ります。 また、電波を反射する素材からなる板で鏡のように入射した電波を90度、あるいは希望する角度に反射する反射板も今後利用される可能性があります。こちらは電波を強化するわけではありませんが、それでも基地局の電波が直接届かないところをカバーするのに有効です。
| 通信容量の増強 通信容量は、帯域幅に加えて無線の周波数利用効率によって決まります。周波数利用効率というのは、無線の単位帯域幅(1Hz)あたり、単位時間(1秒)に送れるビット数を意味します。たとえば10MHzの帯域で周波数利用効率が2bps(bits/second)/Hzであれば20Mbps、4bps/Hzであれば40Mbpsの速度が実現可能です。 基地局の通信容量はその基地局を利用するスマホ同士で共用するわけですが、周波数利用効率を高くして容量が大きくできれば個々のスマホで利用できる通信速度も相対的に大きくすることが可能です。 一般に、基地局のアンテナとスマホの距離が短いほど、スマホに届く電波は強く、はっきりとしたきれいな信号になります。電波が強くて干渉が少ないと、同じ周波数の中により細かくたくさんの情報を詰め込むことができます。その結果、周波数利用効率が高くなります。逆に、距離が長く減衰が大きいと、エラーを防ぐために無理をせずゆっくり少ない情報しか送れないため、周波数利用効率は下がります。 限られた周波数帯域の制約の中で通信容量を大きくするためには基地局密度を大きくする、つまり単位面積あたりの基地局数を増やすことが基本ですが、基地局は無制限に増設することができないので個々の基地局の周波数利用効率を上げることも重要です。その手段の一つは、複数アンテナを組み合わせたMIMO(Multiple Input Multiple Output、「マイモ」)を利用することです。 MIMOでは複数のアンテナを同時に使うことで、情報を複数の経路に分けて送ります。たとえば、図2(1)のように2×2 MIMOでは送受信それぞれで2本のアンテナを使って2つの異なる信号の流れを同時に送信し、それぞれの電波の経路の独立性が高いと最大2倍の情報量を送ることができるイメージです。 実際には電波は空中に放射されるので、個々の経路は独立ではなく相関があります。なので、単純にアンテナの数を増やしたからといって送れる情報量がその数だけ増えるわけではありません。それでも、特に建物がたくさんある街中などではビルの反射などで個々の経路の独立性が高まり、MIMOの有効性が大きくなります。 MIMOでは複数アンテナを使って電波を出しますが、アンテナ間で調整、連携することによって、特定の方向に電力を集中させ、指向性を持たせることができます。アンテナの数を増やしていくと指向性をどんどん強くでき、電波をより狭い幅のビームにすることができます。アンテナの数が数十、数百になると鋭いビームを作り、指向性をより高めることができます。これが図2(2)に示すMassive-MIMOです。 4Gや5Gでは送受2アンテナの2×2 MIMOや4アンテナの4×4 MIMO が多く用いられますが、Massive-MIMOはビームの指向性がより高く、到達距離もより大きく、その分、カバレッジが広くなります。電波は周波数が高くなると飛びが悪くなりますが、Massive-MIMOは5G専用に割り当てられたような高い周波数でも比較的大きなカバレッジを実現できます。 また、Massive-MIMOでは同時に複数のビームを形成してそれぞれ異なるスマホとの通信に利用することも可能です。これはMU(Multi-User)-MIMOと言われますが、同じ無線周波数の電波を同時に複数のスマホとの通信に利用できるため周波数利用効率が良くなり、結果的に基地局全体の容量が大きくなります。 NTTドコモはMassive-MIMO対応の5G基地局を含めて増設を行っているようですが、同じ周波数帯域を持つ基地局であれば、Massive-MIMOを用いることでより大きな通信容量を賄うことができます。
| 混雑エリアでの通信品質確保 モバイル通信における通信品質は、静止状態での通信速度や遅延時間と移動中において途切れにくい継続性や安定性の両面で評価する必要があります。 静止状態での通信品質は、その場で利用可能な基地局のサポートする周波数帯域、周辺の電波状況、混雑度などで決まります。特に、混雑エリアでユーザーが十分に満足する通信品質を提供できるかというのが大きな課題です。 モバイル通信では、上記のようにさまざまなタイプの基地局を組み合わせて電波の届かない穴がないように面的なカバレッジを形成します。そのため、逆に隣接した基地局やアンテナのカバレッジが重なるエリアが生じます。アンテナのカバレッジが重なるエリアでは、同じ周波数が利用されると相互に干渉が生じる可能性があります。 周波数干渉は通信性能に悪い影響を与えるため、いかにこれを最小限にとどめるかというのが非常に重要です。基地局の実際の運用では、この基地局間、スマホ間、そして基地局とスマホの間の干渉を最小化するために図3に示すように設定、時間、周波数、向き、出力などさまざまな面で工夫されています。 設定の面では、たとえば図3(1)のように鉄塔やビルの上にあるアンテナの左右の向きや地面方向の角度(チルト角)を最適化し、必要な所にだけ電波が届き、余計な所には届かないようにします。これにより、隣り合った基地局やアンテナのカバーエリアが重なり過ぎないようにします。 時間の面では、たとえば図3(2)のようにアンテナ間でカバレッジが重なる場所で片方のアンテナに接続しているスマホの通信中は、別のアンテナはその方向への電波出力を弱めることにより干渉を抑えるようにします。 周波数の面では、図3(3)のように同じ帯域の中のある部分を片方のアンテナに接続しているスマホに優先的に割り当て、別の部分を他方のアンテナに接続しているスマホに優先的に割り当てて干渉を抑えるようにします。 向きの面では、図3(4)のようにMassive-MIMOを含むMIMOによる指向性のある電波(ビーム)を必要なスマホの方向だけ強くします。逆に他の方向の電波を弱くすることで干渉を抑えます。 最後に出力の面では、図3(5)のように基地局アンテナとスマホの間の距離が近いところでは基地局とスマホ双方で弱い電波を送るように、遠いところでは相対的に強い電波を送るようにして不要な電波拡散による干渉を抑えます。 これらは個々の基地局単独では実現できず、基地局間の連携や基地局群によって構成される無線アクセスネットワーク(RAN: Radio Access Network)全体としての調整が必要となります。それらについては、3GPPでもさまざまな仕組みが標準化されています。 個々の基地局アンテナのカバレッジエリアをセルと呼びますが、たとえばセル間の干渉を抑える仕組みとしてICIC(Inter-Cell Interference Coordination)や、隣接セル間で連携して一つのスマホとの送受信を共同で行うCoMP(Coordinated Multipoint)という仕組みがあります。また、RAN全体として自動的に基地局アンテナのチルト角を調整したり周波数を最適に利用するSON(Self-Organizing Network)もあります。 混雑エリアで増設により基地局の密度が大きくなると、全体としての容量が大きくなると期待されます。しかし、実際にはこのようなさまざまな仕組みにより基地局間の干渉を抑えたり、基地局間で協調しながら無線周波数をうまく利用しないと期待通りの性能が得られません。通信品質の改善においては、単に基地局を増やすということではなく、このような仕組みを用いて全体として最大限の性能を発揮できるようにしています。 | 移動中の通信品質確保 移動中のスマホの通信品質は、ユーザーの動線に沿ってスマホ接続先の基地局が切り替わるハンドオーバーを含めて無線状態が連続的に変化するため、静止時に比べてさらに基地局間の連携が重要となります。 移動中の品質維持で最も重要なのは、切れ目なく継続して安定した通信サービスを実現することです。そのためには、ハンドオーバーを行うセル相互間、そしてスマホとの密な連携が欠かせません。そのためにさまざまな仕組みが用いられています。 スマホは周囲のセルの電波の強さや品質を継続的に測り、その結果を今つながっているセル(旧セル)に報告します。旧セルはその情報にもとづいて「いつ・どこへ切り替えるか」を判断します。 ハンドオーバーの段階では、旧セルがハンドオーバー先の新セルにあらかじめ無線帯域の確保を依頼し、切り替え中に届いた通信データは一時的に旧セル側で保持して新セルへ転送します。あわせて、基地局とコアネットワークの経路も素早く付け替え、利用中の品質(通信優先度や遅延など)が切り替え後も維持されるようにします。 電車のように多くのスマホが同時に移動して、一斉にハンドオーバーする場面にも備えが必要です。たとえば、ハンドオーバー前後でできるだけ同じ周波数帯を使うことで探索の手間を減らし、ハンドオーバーの失敗や遅延を抑えます。 さらに、ハンドオーバー先の候補セル情報を事前に配っておきスマホが最適な瞬間に自律的に切り替えたり、ハンドオーバー中にデータを二重に送って一時的な接続断を吸収する仕組みもあります。 鉄道区間などでは、線路方向に指向性の高い電波で細長いセルを作って切替頻度を下げる方法も有効です。線路に沿って同じセルのアンテナを分散配置し、ハンドオーバーせず同一セルのまま複数のアンテナでエリアをつなぐ構成により、広い区間で安定した通信を実現するのも有効です。
| 屋内通信品質の確保 モバイル通信トラフィック全体の70~80%程度が屋内で発生しているということがさまざまなレポートで報告されています。これは、屋外の基地局増設による通信品質改善だけでは不十分で、ビル内や地下街などでモバイル通信サービスを高い品質で提供するための取組みも非常に重要であることを意味しています。 オフィスビルの中でのモバイル通信について考えてみると、屋外の基地局から窓や壁越しに電波をビル内に届けることで屋内サービスエリアを形成するやり方と、屋内に専用の基地局アンテナを配備してサービスエリアを形成するやり方があります。 700~900MHz辺りのプラチナバンドであれば、ビルの窓や壁越しでも十分な大きさの電波が浸透する可能性は高いですが、5G専用のサブ6(3.7GHz帯や4.5GHz帯)となると窓越しに電波が浸透する可能性は低くなります。 しかし、現実にはオフィスビルの多くで5Gをサポートするビル内専用の基地局アンテナを配備していないのが実情です。モバイル通信トラフィックが増大する中で、ビルの中での5G利用の要求は高まると想定されることから、今後ビル内専用のシステムの導入が期待されます。 さて、KDDIは2025年度内に5Gスタンドアローン(SA)の人口カバー率を90%超とする予定とアナウンスしており、他の通信事業者も早晩追随すると考えられます。これに伴い、急速に5G SAベースの機能が実現、拡充される可能性があります。モバイル通信において5G SAの普及が進むと、ビル内でも5G SA利用のニーズが高まることも想定されます。 業務用のスマホでは5G SAの利用を前提としたアプリが搭載される可能性があり、特にネットワーク機能を切り出して用いるネットワークスライシングが普及し、アプリとスライスが対応付けられるようになるとビルの中でもこれらを利用することが一般的となる可能性があります。特に、通信性能やセキュリティなどの要件が厳しい業務用アプリは5G SAの利用が前提となるかもしれません。 また、4Gや5Gの通信モジュールを搭載したパソコンが徐々に普及してきており、業務用ではセキュリティや安定した接続性の面からWi-Fiを使用せず、モバイル通信の利用が広がっていく可能性もあります。オフィスビルの中でもパソコンがモバイル通信を利用するようになると、ビル内での大容量のモバイル通信をサポートする必要が出てきます。 これらの流れから、長期的にはビルの中でもWi-Fiに加えてモバイル通信のニーズが高まっていくことが予想され、屋内専用のモバイル通信用通信機能やアンテナの重要性が高まると考えられます。 ビルの中では、各通信事業者が個別に無線設備を配備するというよりも、従来から事業者間でのアンテナなどのシェアリングにより低コスト、省スペース、省エネで設置工事の手間も小さくする方策が模索されています。その延長線上で、5Gも含めてさらに効率が良いソリューションの普及が期待されます。 その一つの方向として、モバイル通信事業者間で一つの周波数帯をシェアすれば、一つの無線設備で全事業者のユーザーにサービスを提供することができることから、今後のシェアリングのあり方として有力ではないかと考えられます。 この周波数帯として、既存のモバイル通信事業者が免許を持っている帯域を利用するか、新たな共用専用の周波数を割り当てるかなど、さまざまな可能性があります。長期的なインフラシェアのあり方や、そのための周波数利用などに関わる制度整備などについては今後の展開に期待したいと思います。
| おわりに サービス品質はモバイル通信ユーザーの満足度に一番影響する指標であり、通信事業者を選ぶ際の最大の判断基準の一つです。その基本となるのが無線基地局の展開であり、十分な数量の基地局を設置したうえで的確な運用により最大限の品質を提供することが期待されます。ユーザーから見れば、通信事業者間でサービス品質の競争が進みモバイル通信の使い勝手が改善するのは好ましいことです。 一方で、ビルや商業施設などにおける限られた空間においては必ずしも競争原理が働かず、5Gがいまだ十分にサポートされていないといった問題も顕在化しています。ユーザーへの満足いくサービスの提供といった面とコスト効率という面を考えた場合、多くの屋内施設においては通信事業者間で協調してインフラシェアによるモバイル通信サービスをサポートしていくのが適切ではないかと考えられます。 5Gが進化していきスタンドアローン構成が広がっていくと、産業系を中心として品質を保証した上でサービスを提供していく必要性が顕在化してくると考えられます。そうした中で、モバイル通信ネットワークの的確な設計が益々重要となります。通信事業者には品質面にこだわりを持ってネットワークの構築を続けていただきたいものです。 | 藤岡 雅宣 1998年エリクソン・ジャパン入社、IMT2000プロダクト・マネージメント部長や事業開発本部長として新規事業の開拓、新技術分野に関わる研究開発を総括。2005年から2023年までCTO。前職はKDD(現KDDI)で、ネットワーク技術の研究、新規サービス用システムの開発を担当。主な著書:『ワイヤレス・ブロードバンド教科書』、『5G教科書 ―LTE/IoTから5Gまで―』、『続・5G教科書 ―NSA/SAから6Gまで―』(いずれも共著、インプレス)。『いちばんやさしい5Gの教本』(インプレス)、大阪大学工学博士
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