連載ページ用バージョン (7月(2)日付フォルダー参照中)
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不要不急の外出を控える中、37度の炎天下にも覚悟を決めて家を出ました。 「川崎市立看護大学の実習授業での模擬患者」としての役割があったのです。以前このk-unetのマンスリーレター(2021年11月号)にも書かせていただいたあの模擬患者役の第二弾です。
あれから3年、ボランティアを粛々と続けており、今回は「認知症」の役でした。もはや、日々忘れっぽい私には、ピッタリ、簡単な役回りだと高を括っていたのですが、これが大間違い!患者名「川崎A子」なる者のシナリオは「夫の介護の疲れから認知症が悪化、記憶障害、言語障害があり、介護施設に入所中で、楽しみは、おやつのプリンだけ。愛読書は『暮らしの手帖』だが、読むのに天眼鏡を探す。杖を使うがいつも忘れて歩き出す」など暗記するのが大変!でも、とにかくA子の全体像を頭に叩き込みました。
実習内容は2パターンで、A子が実習生(看護士の卵)を困らせるポイントは2つです。 1、 施設の余暇活動に、実習生がA子を娯楽室の映画タイムに誘うが、なんとしても気が進まないと断る。 2、 入浴タイムで、実習生が部屋に呼びにくるが、A子は理解不能、グズグズして困らせる。
実習生との色々な問答を想像して、前の晩まで想定会話の復習などをしていたのですが、やはりハプニングはありました!映画のタイトルは、「男はつらいよ」と決まっていたのですが、大勢の実習生の中で誰一人として知っている人がいなかったのです。「渥美清」と言っても「どなたですか?」状態・・・。また、入浴に行くそぶりの際、杖を小道具に使うのですが、杖など使ったことの無い私は足で杖を蹴飛ばして、転びそうになってしまったのです。こればかりは演じなくても普通の年寄りのまんま! 最後に、実習生の皆と「振り返り」の時間があるのですが、A子になり切った私は、実習生の懸命な対応を思い出し「天使のような微笑と優しさで、寄り添ってくださりありがとうございました。」と言ったら、もう胸がいっぱいになってしまいました。ちなみに、転びそうになった私をスクッと助けてくれた実習生とは、教室を出るときに目が合い、小さく手を振ったら振り返してくれました。 本当にさわやかな真夏の午後となりました。
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