第24

 

英国 キュー 王立植物園
おいしい ボタニカル ・アート
食を彩る 植物の ものがたり
11/5-2023/1/15  西新宿 SOMPO美術館

 

 「おいしいボタニカル・アート」のキャッチ―なコピー。
 ボタニカル・アートの意味をご存知でしょうか。ボタニカルは植物の、植物学のといった意味ですが、ボタニカル・アートになりますと科学的な研究のために草花を詳細に正確に描いた絵になります。この展覧会はボタニカル・アートによるイギリスの歴史と食文化をたどるものです。

 キュー王立植物園について少々触れておきましょう。ロンドンから南西に位置するキュー(Kew)にある世界で最も有名な植物園です。熱帯植物を集めた庭を作ったことから始まり、今では、世界中で採取された種子植物の標本が700万点、菌類および地衣類の標本125万点を所蔵、新種の発見などにも貢献していて2003年にユネスコ世界遺産に登録されました。日本から送られた桜も植樹されていて立派な日本庭園があるのには驚かされます。四季感が計算しつくされ、枯山水まであるんですよ。そしてキューガーデンの未来へのプロジェクトとしてシードバンクがあります。零下27℃倉庫で種を保存、190ケ国以上からの種42,000種を保護し絶滅に瀕した貴重な植物を未来へつなごうとしているのです。当時のイギリス帝国の権力誇示から始まったキューガーデンではありますが、現在の貢献と未来へ向かっていることに対して拍手喝采です。

 冬晴れのある休日、当展覧会に行ってきました。
 ジャガイモ、玉ねぎ、アスパラガスといった野菜からリンゴ、洋ナシ、プラム等の果物、そしてコーヒー、茶、ハープ、スパイスなど一点一点が詳細に丁寧に描かれていました。葉脈や花のがくなどが緻密に鮮やかに描かれた植物は、200年前から色あせることなく本物の植物がそこに生き生きとしっかりと根を張っているようでした。ローズマリーの木に至っては、私が自宅庭で毎朝水やりをしている植物そのものが額のなかにあり、当時のイギリスと一体化してしまったような時空を浮遊してしまっているような感覚に身を委ねてきました。

 私が最も惹きつけられたもののひとつはチャの木です。紹介映像では、なんと、ロバート・フォーチュンというイギリス人で世界的な大プラント・ハンターが出てきて、私の興奮は頂点に達しました。19世紀半ば、イギリス園芸協会から中国へ派遣され、当時の世界最高品質である中国茶のチャノ木と栽培方法を手に入れるよう国命を受けた人物なのです。フォーチュンはインドで中国茶の栽培を成功させ、茶貿易により世界中の経済のほぼ全ての面に影響を与えました。後世、史上最大の窃盗といわれ、今ならさしずめ産業スパイ活動です。
 このロバート・フォーチュンは1860年、日本を訪れています。「日本人の国民性の著しい特色は、庶民でも生来の花好きであることだ。花を愛する国民性が、人間の文化的レベルの高さを証明する物であるとすれば、日本の庶民は我が国の庶民と比べると、ずっと勝っているとみえる」という言葉を著書『幕末日本探訪記―江戸と北京』に残しています。

 イギリスといえばアフタヌーンティー、当展ではティー・セットやカトラリーなどのテーブル・ウェア、18世紀頃の手書きレシピ、ヴィクトリア朝の主婦のバイブル『ビートン夫人の家政読本』といった資料も展示されています。
 ぜひお出かけになってみてください。優雅でノーブルな19世紀のイギリスがお待ちしております。

 

(2023.1.2) 

 

  

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