第16

 

風景画のはじまり  コローから印象派へ
ランス美術館 コレクション

2021.6.25-9.12 SOMPO美術館

展示品構成: 19世紀風景画 -バルビゾン派 -版画家の誕生 -ウジェーヌ・ブーダン ー印象派の展開
画家:  コロー   ルノワール   モネ   ピサロ   クールベ   ブーダン   シスレー 

 

 雨の日のとある週末、行ってきました。混雑もなく当日券で入場でき、館内も人影もまばらで落ち着いて観覧でき、満足のいく展覧会となりました。
 フランス絵画や風景画、印象派展覧会となると必ず展示されているといっていいコローです。一見地味と思われる色使いではありますが、淡い濃淡の木や森の葉とくすんだ空の色、境目のあいまいな湖、そしてうっすらと存在しながら存在感のある人物、そこからあふれる詩情感、惹きつけてやまない魅力がありました。今回の展覧会では存分にそのコローの作品を見せてくれました。

 自画像

 今回は本展覧会の中心画家であるコローに焦点をあて、コローと風景画について取り上げてみます。

 ジャン=パティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot (1796-1875) パリ生まれ

 まず、風景画です。風景画は西洋絵画の歴史のなかでは物語の背景やわき役にすぎないと考えられていたため地位が高くありませんでした。しかし19世紀のフランスではそうした風景画に対する考えに変化が起き、フランス革命と産業革命を経て生まれ変わった社会では、身近な自然を描いた風景画が人気となっていきました。イギリス人画家のジョン・コンスタブルとターナーの作品が大きな影響力を与えたことはいうまでもありません。
 それまで絵画には伝統的な地位の順序が決められていたのです。歴史画、肖像画、風俗画、風景画、静物画の順です。

 イタリアのダンス
(
今展覧会で展示)


 湖畔の木々の下のふたりの姉妹
(今展覧会で展示)

コローはイタリアへ3回旅行してイタリアの風景を多く描き、フランスに戻るとフォンテーヌブローの森などで風景画を手がけました。イタリアで学んだ光の効果はコローの画風に変化をもたらし、のちの印象派に大きな影響を与えるようになるのです。

 コローはパリ市内の裕福な織物商人の子として生まれ、布や色に幼少期から接していた経験はのちの画家としての色彩感覚に多大な影響を与えたようです。シティボーイでありながら風景画に重点を置いて描き、その風景画には野暮ったさや闘争的、挑戦的な感覚はなく、詩情豊か、シンプルな色合いの中に大変洗練された上品さが漂っていて知性も感じられます。一遍の詩が浮かんでくるではありませんか。
 コローの評価はずっとかんばしくなく、サロンに出品してもその多くは落選しました。一般大衆にも人気がなく、作品もほとんどが売れず、不遇な時代を体験しながらゆっくりキャリアを積んで評価を高めていき、晩年に高く認められるようになりました。
 1845年にボードリヤールが「コローこそ、現在の風景画のリーダーだ」と先頭に立って宣言してから徐々に注目が集まり始めたようです。「コローの色は薄く、作品は平凡で下手くそだ」という批判に対して「コローは色彩を重視するカラリストよりも作品全体の調和を重視するハーモニストであり、全体的に常に衒学的でなく、色がシンプルだからこそ魅力的なのである」と反論しました。晩年は謙虚で控えめ、幸せな生活を送りました。「人はプライドを持って威張るべきではない」というのがコローの固い信念でした。

 「自然は芸術を模倣する」と言ったのはオスカー・ワイルドです。どういうことでしょうか。思考経路を反転しないと理解不能の表現にも思われますが、意味深いメッセージ性のある言葉です。芸術を通して自然の美しさに気が付き自然のあるがままの姿とその美を再認識するということでしょうか。

 最後に、最も知られた一点で、コローの代表作となった作品を。

 モントフォンテーヌの想い出

 《モントフォンテーヌの想い出》
 「サロンに出品された際に皇帝ナポレオン3世によって買い上げられ、フォンテーヌブローの城館に置かれました。皇帝失脚後はその財産整理によって国有財産となり、1879年以来ルーヴル美術館に所蔵されています。銀灰色の朝の光の中に、若い女性と子供たちが思い思いに花を摘み、樹に掲げて遊んでいる。伝記作者ロボー「軽々と筆を走らせたその確信的で単純な製作法によって、この自然の素描はこの画家の美しい作画法をよりよく分からせてくれる。これはもう、絵というよりは、あえて言うならば詩そのものなのだ」と語っている。まさに「甘し(うまし/ douce)国フランス」を体現するようなこの絵の理想主義的なイメージは、フランス人の心を掴んだのであろうか、発表後は瞬く間に版画などを通して多くの人に知られるようになった。さらに20世紀に入っても、紙幣の絵柄になるなど、ミレーの『晩鐘』に劣らない国民的な人気のある絵となった。」(高橋明也著『コロー 名画に隠れた謎を解く!』より)

(2021.9.23)

 

  

 コロー作品集 (YouTube から)

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島崎さんへのメッセージ

楳本さま いつも掲載ありがとうございます。

コロー作品集、楽しみました。

軽快な音楽がとても興味深いです。テンポのいい音楽に乗りながら詩情豊かなコローの絵画を楽しむ、

冒頭で、一瞬、んっ??と思いましたが、鼓動に響いてくるこの軽快感がとても心地よいのです。

ありがとうございました。

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