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四 季 雑 感(51)
     
樫村 慶一 

アバディーン・アンガス牛の話

 皆様 明けましておめでとうございます。

 そうは言っても、国内は騒然、世界は混沌、地球環境は生物の終焉に向かって加速度的に悪化している。そんなことを考えると、何がおめでたいのかと言いたくなるのだが。昨年秋にはやっぱり訃報が何通か届いた。卒寿ともなると同輩諸氏も段々いなくなっていく。KDDの友人知人との交際範囲が狭まっていくので、その代わりではないが、近年は会社以外の人との付き合いを広げることを心している。
 今年2020年、2度目のオリンピックがやってくる。56年振りである。今の世界にはおよそ200の国と地域がある。地域とは、台湾、香港、マカオ、パレスチナ、プエルト・リーコ、南極などだけど、この中から何か国・地域が来るのか知らないが、とにかく世界中から来る。初めて来る極東の小さな国では、どんなものが食べられるかは、心配ごとの一つだと思う。でもそれは恐らく来てみて杞憂に過ぎなかったことが分かるであろう。日本は世界でも有数な万国食通国だから、必ずや気に入った食事があるはずである。イスラム教信者を除いて大体は牛肉や豚肉、それに鶏肉を食べる。私は、世界で1,2を争う牛肉王国で暮らしたことがあるせいか、牛肉には目がない。新年早々なので、食べ物の話でもいかがかなと思い、牛肉を話題にしてみた。

 今、東京で食べられる牛肉は、国産、オーストラリア、米国、メキシコ、アルゼンチン、それにわずかにウルグアイなどの肉だが、和牛というのは、日本牛の種を輸出して現地で育てたものも和牛というので、日本産ばかりではない。和牛はご存じのように、”さし”がはいっている。これは脂だから火が通ると白くなる。脂が多すぎるので私は和牛は好きではない、和牛を食べるのなら、しゃぶしゃぶが一番脂を少なくする方法である。
 赤身が多く柔らかいのがアバディーン・アンガス種だ。これを略してアンガス牛と言っている。元は英国のアバディーンとアンガス地方で生産された種族だが、今では米国産とオーストラリア産が主流である。ステーキ専門レストランでは、昨今赤身のメキシコ牛が美味しい。昨年からアルゼンチン牛も輸入され始めた。しかし、おいしさとか生産量などの世界的ランキングでは、トップはオーストラリアかアルゼンチンかということになるのであるが(昨年テレビでも味比べがあった)、今、日本に輸入されているアルゼンチン肉は、南緯50度(マゼラン海峡付近)以南の、南極に近く一年中強い風が吹いている地域で育った牛なので、肉が締まっていて固く、世界1,2と言う評判とはまったく違う。それゆえ、今はアルゼンチン肉はお勧めできない。本格的に中部の大パンパ(草原)で育ったアンガス牛が入ってきたら、世界1,2の貫禄を示すと期待し、首を長くして待っている次第である。
 米国とオーストラリアの違いは餌の違いだ。米国は玉蜀黍が主食だけど、オーストラリは牧草である。アルゼンチンもアルファルファー(日本名ムラサキウマゴヤシ)と言う牧草を食べて育つ。根が地中長く伸び栄養豊富な野草で1米くらいになる。これが地平線まで続く大草原に一面にはえており、牛は朝起きて太陽の動きに合わせ体を回転させて足元の草を食べ、陽が落ちると寝る。足元に無限にあるので餌を求めて歩く必要がないので、体に柔らかい肉がたっぷり付いている。
 近年は、肉を寝かせることで旨みが増すという「熟成肉」(ドライエイジングと言う)が評判になっているが、早く言えば腐らせることで、本当に腐る直前で食べさせるのである。温度1~2度、湿度70~80%の熟成庫内で1か月以上乾燥させると、表面にカビが生え水分が飛んで、うま味が凝縮すると言う。腐っているのは表面の数ミリだけで、そこを削って出荷する。ただ、まだ定義が定まっていないので業者がいろいろなやり方で熟成といっているので、農水省が熟成肉の定義を決めると言っている。
 そんなことしなくても、アルゼンチンの肉は十分美味しい肉だ。味付けは塩だけだが、現地で暮らす日本人は携帯用の小さな醤油瓶を持ち歩いて、食べる時数滴垂らす。これで旨みがさらに増える。彼らは朝から肉を食る。日本人の年間牛肉消費量が近年10グラム増えて平均90グラムになったと最近の新聞で読んだが、彼らは10倍くらい食べる。アンガス種のビフテキをビッフェ・デ・チョリッソと言うが、これが一番おいしい。レストランの一人前は大体400~500グラムである。赤身と脂部分がはっきりしているので、脂が嫌な人は切り分けるのが簡単にできる。牛肉のヒレ部分は流石に柔らかさは特別で、これは病人食とか、幼児の離乳食になる。ヒレ部分を厚み4,5センチに切ってレアーに焼き、それをスプーンで掬うようにして食べさせる。
 ご存じかどうか知らないが肉は消化は抜群である。私は、肉が多いと聞いていたので赴任の時、消化剤を沢山持っていった。ところが、同じ消化剤でも日本人の様に米を主食にする人種用と、肉を主食の人種用とは消化剤の成分が違うそうだ。現地の日系人の医者に、だまされたと思って消化剤なんか飲まないでいてごらんなさいと言われ、300グラム位のを食べて消化剤を飲まないでいた。ところが食後は勿論翌朝も全然胃に違和感がないのだ。それ以来肉の消化の良さをすっかり信用している。
 牛肉人種も勿論豚肉も鶏肉も食べることは食べるけど消費量で比べれば牛肉との差は大違いである。牛の次は羊で、次が豚や鶏とかキルキンチョ(アルマジロ)、ウサギなどである。豚は固くてビフテキにしたのは全く美味しくない。豚は牛の放し飼いの草原で牛の周りを走り回っているので逆に肉は固く、臭くてとても日本人が知っているトンカツの肉とは違う。牛が肉になる様子を順を追って撮影した写真を紹介する。残酷なことだが、私は常に、人間に人間以外の動物を殺す権利を与えたのは誰なのか疑問に思っている。
 お正月にすき焼きなど食べた方もいるだろうが、霜降り肉ではなく、外国産のアンガス種の赤身肉をぜひ食べてみて頂きたい。いかにも牛肉ということがお分かり頂けると思う。
   では、次号をお楽しみに。  (2020.1.10記)

【上の写真は、柵などない大平原でのびのび過ごす牛達。場所により豚や鶏が牛の周りを走り回る。アルゼンチンの草原の一部で。】




 

 


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